日本×スコットランド

劣勢に立たされた後半、胃が締め付けられるような展開が続く。W杯のゲームにおいてこのような状況に陥ることに対する免疫がない。4本目のトライを取った時点で、このチームの試合が来週も見られることはほぼ決まっているのだから、もっと安心しても良さそうなものだが、決勝トーナメントにいけるかどうかとか、グループリーグを何位で通過するかとか、そんなことより大切なことがあった。このゲームに勝つこと。

次の試合に進むという観点からは、試合前から相手チームのほうが重たいものを背負っていたことは否めない。そして、ホームのアドバンテージは計り知れない大きさのものだった。ただ、当初、日本側に有利とされていた日程は、相手の厚い選手層がそのハンデを消していた。そして必ずしも欧州の選手にとって不利ではない気候条件。もちろんW杯期間中だからブリティッシュライオンズは編成されていない(笑)。そのなかで、ベストメンバーをぶつけてきた本気のスコットランド代表を日本代表が奇策を弄するのではなく真っ向勝負で屠った。こんな日がくるとは・・・

前半、負傷退場を余儀なくされた具の悔し涙に、このチームに関わるひとりひとりが犠牲にしてきたものの大きさを見る。そして、美しすぎる稲垣のトライとそのトライに子供のようにはしゃぐ中島にこのチームの結束を見る。

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 いままでこのスポーツに関心がなかった多くの人が、TVの前に釘付けになっているのは、いまの世の中にいちばん足りなくて、いちばん必要なものを、桜のジャージを着た選手たちがグラウンド上で体現しているからなのだろう。

今節、大型台風が日本を襲い多くの犠牲者が出た。台風の影響で最終戦が中止になり、戦う機会を失ったままグループリーグ最下位が決まったカナダ代表は、台風の爪痕が残る釜石に残り、泥掃除などのボランティア活動に参加した。トンプソンは、被災した人たちのことを考えると「ラグビーは小さいこと」だと言う。でも、大きな力を持っている人は、概してその力を正しく使わない。小さな力だからこそ出来ることがある。日本代表のビクトリーロードには、まだまだ先がある。

準々決勝の対戦相手の南アフリカはW杯での対戦成績では勝率10割(笑)。アイルランドスコットランドとの試合前、ずいぶんと弱気な予想をして面目まるつぶれの伝道師としては強気の予想をしたくなる。そして、このゲームが行われる10/20は平尾誠二さんの命日。この夜、東京スタジアムで「おお、このゲーム、なかなかおもろいやないか」と平尾さんが唸りそうな試合が展開されますように。

 

 

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