第9回 牛岳トレイルマラソン(2)

早朝、南西の空を見ると、薄い雲がかかっているだけだった。
台風に関する前夜のネガティブな心の迷い。
もっと自分の晴れ男ぶりを信じればよかった。
杞憂だったのだ。
それとも、てるてる坊主が効いたのか。

牛岳トレイルマラソン・ロング(16km)の部。
スタート時間を10分感違いしていて、気持ちを完全に作れないままのスタート。
やはり、トレランは何が起こるかわからない。
(トレランがどうこうより、開催要項をよく読めということだが・苦笑)
いきなりのゲレンデ直登は、冷静さを失わせるには十分なテキスト。
その後のジグザグの登りも、姿勢や足を置く場所に迷いが生じまくり、2km地点で経験したことのない腹痛(胃腸の問題ではなく、腹筋に起因)に見舞われ、真剣にリタイヤを考える。
ラッキーだったのは、ここからコースが緩やかな林道になったこと。
面白いように前を行く人をパスすることが出来、痛みのことは完全に忘却の彼方へ。
たぶん、半笑いで走っていたんじゃないかな。
そもそも、どこか痛かったんだっけ?
ペース配分が正しいかはまったくわからないのだが、まあいっても16kmでしょ、と妙に強気なレース展開。
その後の舗装路でも、順調に順位をあげる。
トレラン仲間から言われた「牛岳はrugloveさん向きのコースですよ」は、リップサービスではなさそう。
まぁ、気のきいたようなことを言う人は山の中なんて走らないのだが。

第二林道は、最初のパートで急な階段が延々と続く。
さすがにここでは、坂よりも自分の太腿と脹脛が愛おしい。
全部走る必要はないんだけど、歩きと走りの判断が難しいな。
急な登りがひと段落した狭い林道で渋滞の2番目を走る羽目になり、若干いらいらモード。
少しだけ余裕のあるスペースで「スミマセン、右、行きます」とダッシュで前へ。
すぐ後ろの人(のちにトライアスリートと判明)もそれに続き、ふかふかの下りをしばらく2人で「ひゃっほ〜」とか、EXILEばりに「これ、やべえ」を連発し、飛ばしまくる。
いやぁ、トレラン、楽しすぎだよ。

また舗装路に出た後も、下りをキロ3分台で箱根駅伝の6区のランナーになったつもりでかっ飛ぶ。
長〜い下りの後に、コース案内で紹介されていた頂上エイド前の「心臓破りの坂」発見。
コースはもう残り半分なので、けっこうなスピードで駆けあがらせていただく。
力をためておくなんて、もったいなくて。

残り3km。
時計を見ると、レース前に、このくらいの時間でゴールできたらな、とぼんやり思っていた時間まで10数分。
その時間をモチベーションにして、砂利の農道を飛ばしゴールを急ぐが、ロープを使わないと登れない2段階の急坂が突如(コース案内には、しっかりあるのだが)現れる。
ち〜ん。

それでも、気を取り直し、ぜーぜー言いながらけっこう滑る急坂をクリアし、最後の下りで数名をパス。
意気揚々とゴールに向かうが、ゴール数メートル手前のカーブで、この日最初にして最大のコケ。
MCに「あらあら、大丈夫?」と言われてしまう。
いちばんキメなければいけない場面だったんだが・・・。

ゴール後は、余韻に浸ることなく、チームSFのメンバーを応援しに、コースを逆走。
たまには、コーチらしいこともするんです。
純粋にメンバーのことが気になっただけで、別に坂をおかわりしたかったわけではありません。
メンバー全員が、ケガなく無事完走できたことが何よりだね。

プロが仕切るのではなく、地元の商工会青年部の手作りによるアットホームな大会。
こういう温かい雰囲気の大会が、これからもずっと続いてくれるといい。
いいレースをデビュー戦に選んだな〜。

頑張ったご褒美を補給しながら、写真に撮ってきたリザルトを確認すると、年代別4位だった模様。
ローカルな大会なので、年代別は表彰の対象ではないけれど、3位になれなかったのが悔しすぎる。
アスリートは、難儀だ・・・。

・・・

鏑木毅さんは「50km以上のレースを走って、初めて一人前のトレイルランナー」と言っていた。
夢の途中。
上らないほうがよかった階段に足を一歩かけてしまった予感。
好きになってはいけない人に恋をしてしまった予感。
これから、ぼくはどこに行くのだろう・・・