夢のような試合(2)

東京は、朝からあいにくの天気。
東日本大震災復興支援「V7戦士 チャリティマッチ」は、
雨で開催が危ぶまれたが、予定通り決行。
関東協会さん、ありがとうございます!

レトロな雰囲気のマッチメイクに
秩父宮は、品のいい紳士・淑女多数。
屋根の下の席を確保して、試合が始まるまで、
パンフレットを読んで、と思ったけど、
石山さんのメッセージに涙腺が危うくて企画倒れ。
(ちなみにパンフレットの「わたしたちは応援します!」のコーナー、
 神鋼の写真の平尾選手のおでこの辺りに、私の名前も載っています。)

渡辺謙さんと吉永小百合さんのステキなメッセージの後、
深紅のジャージの釜石と、
ブルーに黄色のラインの神鋼が登場。
平均年齢で10歳近く若い神鋼が、
釜石に敬意を表して2ndを着たのかな。
懐かしいあのジャージが、
グラウンドで見られるだけでもうシアワセ。
仕事で来られなかった彼にも見せてあげたかったよ。

オープニングセレモニー。
V7戦士を冷たい雨のなか、ずっと立たせたまま、
空気の読めない復興大臣の長〜い演説の後、
(こんな人が責任者だから復興が進まないんだよ)
大臣の5倍くらいの拍手に迎えられて松尾さん(59)登場。
「みなさん、僕たちこんなになっちゃいましたぁ」
と、雨の降りしきるスタジアムの雰囲気を一瞬で明るくする。
「今日はスローモーションのラグビーを楽しんで下さ〜い」って、
震災復興という重たいテーマも、この人にかかると・・・(笑)
う〜ん、天性だなぁ。

ゲーム前のコンビネーションから、平均年齢差が如実に表れる。
あれ、釜石、大丈夫?


20分ハーフのゲームが、キックオフ。

笑いの絶えないスタンドは、幸せな空間。

でも、林、大八木の突進。
平尾、綾城の鋭いステップ。
見せ場もちらほらと・・・
って、神戸ばっかりだね(笑)

これはもう、どっちが強いか、っていうより
どっちが若いか、だな(笑)
がんばれ釜石!

開始2分で、釜石が一人目の交代。
10分すぎくらいから、選手の入替は佳境に。


ハーフタイム。
不出場の理由を問い詰められるヒゲ森さん。
なんだか、もごもごしていたけど、このメンバーと
ラグビーやりたくないわけないよな。

「もっと真面目にやってくださいよ」
と言う大八木さんに
「こんなはずじゃ、なかったんだよな〜」
と嘆く松尾さん。

前半、10番と12番で直接対決のなかった松尾さんと平尾さん。
インタビュアー大友信彦さんの誘導尋問で
後半ラスト10分でのSO対決を約束。
今日に至るまで、倒れないのが不思議なくらい
頑張り続けた大友さん。ここでもGOOD JOBです!


後半は、元木、増穂、伊藤といった
神鋼の若手(!?)が大活躍。
スタンドからは「あれは反則だよぉ〜」の声も。

残り10分、約束通り大物登場。

のこり時間が1分を切って
神鋼が、ダメ押しの3乗くらいのトライを決め30-0とリード。
ここまで容赦ない厳しい笛を吹いていた
八木レフェリーが粋なはからいを見せる。

キックオフから相手陣深く攻め込んだ釜石。
ロスタイムが3分以上経っても
鳴る気配のない終了のホイッスル。

そして・・・

最後の最後に一矢報いた釜石。
八木さん、GOOD JOBです!(笑)

そしてノーサイド

もっとも、この2チームに
元々サイドなんて存在していなかったけど・・・


最初は、なんでTVの取材が来ていないんだ、って思ったけど、
コマーシャリズムに乗せられた視聴率稼ぎではなく
寡黙な代表がリーダーシップをとる
スクラム釜石」というNPO法人と、
その心意気に賛同した人々の気持ちに支えられたイベント。
こういうムーブメントが、被災地の人を勇気づけ、
何かの力になることが出来るのだと信じたい。


・・・


チャリティ−マッチの後に行われたトップイーストの公式戦。
南青山では、「釜石」という単語は、岩手県の一都市を表すものではなく
いつまでも大切にしたい何かを思い出させるキーワードみたいだ。

地元のゲームなのに、完全アウェイの横河武蔵野
ちょっと可哀そうだったけど、いいラグビーしていたな。

22-18と辛くも逃げ切った釜石SW。
OBたちの偉業を改めて感じた1日だったんだろうな。


・・・


最後に
ゲームの前に何気なく読んでいて
泣きそうになってしまった
スクラム釜石代表の石山さんのメッセージを・・・
(勝手に引用させていただきます、スミマセン)

1999年に釜石を象徴するFW洞口さんが倒れ亡くなりました。
2008年には神戸製鋼スクラムを支えてきた兼平さんが亡くなりました。
二人は、27年前の国立競技場で行われた決勝戦スクラムで、
直接対峙したプロップ(1番兼平、3番洞口)です。
二人が元気なら、ここで27年ぶりに再び
スクラム」を組むことが出来たのに、
と思うと残念でなりません。
もし、ここで二人が「スクラム」を組むとしたら、
どんな会話をするのでしょう。
「おい、もう押すなよ」
「もっと気楽にやろうぜ」
「27年前より強くなったんじゃねえか」
こんなことを言うのだと思います。
こんな二人が組むスクラムは本物のスクラム
それは周囲の人たちが気安く口にする「スクラム」とは違うものです。
目には見えないけれど、チームの勝敗を左右する最前線で
戦ってきた者だけが感じる感覚かもしれません。
真剣に、本当のスクラムを組んできた者は、
スクラム」という言葉を口にすることはしません。
口にするほど軽いものではないと思うからです。
でも、二人がここにいたら言うはずです。
スクラム、組もうか」
今日、二人はこのグラウンドのどこかで
スクラムを組んでいるにちがいありません。


私はフランカーだったので、
ここでいうところの「スクラム」の
本当の意味は、よくわからない。
でも、だからこそ、
石山さんが復興に向けたNPO法人の名称を
スクラム釜石」にした思いが強く感じられる。

今日、秩父宮で思ったのは、
自分の愛したものや仲間のことを
いつまでも大切にする人たちのことを
カッコいい大人って言うんじゃないかということ。

このイベントのために立ち上がった全ての人に感謝。

The recovery of Tohoku is with rugby