日本選手権決勝

世紀が変わるころ、静岡県西部に住んでいたことがある。
丸いほうのフットボールがやたら盛んなこの地域で、
楕円球を目にすることに飢えていた私にとって、
年に数回、浜松海浜やエコパで行われる
トッピリーグ前夜の関西社会人リーグ観戦と
磐田市大久保にあるヤマハの練習グラウンドに
オープン戦を観に行くのが、ささやかな楽しみだった。
そんなわけで、あのサックスブルーのジャージには密かな思い入れがある。

TLのレギュラーシーズンは、どこか自分たちのことを
信じ切れていないような試合ぶりだったが、
ノックアウトステージになってからは、
強みを全面に押し出すチームに変身。

昨今、どのポジションにもオールラウンドな
スキルが要求されるようになってしまった
このスポーツの本当の魅力は、
どんなプレイヤーにも固有の存在価値があったこと。

スクラムをめくりあげる(ことに命をかけている)第一列。
スペースがなくても地を這うようにゲインを切るNo8
対面の足首に刺さり続けるCTB。
ゴールキックの儀式を真似てみたくなるFB(笑)

新しくて古いラグビー
ロースコアのゲームでまったく退屈しなかったのは、
ノスタルジックな気分に浸れていたからかもしれない。

勝つことによって思い出したように
クローズアップされだした縮小や降格の危機。
監督のキャラクターから、
そういうことはあまり感じさせないけれど、
このチームの根底にあるのは「情」だと思う。
丸坊主のSHが、泣きじゃくっていたのは、
自身のこれまでの苦労もあっただろうけど、
チーム縮小のさいに、残ることも移籍することもできなかった
チームメイトのことを思っていたのでは、と勝手に想像する。

・・・

1シーズンにいくつものチャンピオンはいらない、
という意見は正論のような気もするが、
今年に関しては、正しくないな(笑)