第2回 南砺100キロマラニック

6/2(日)第2回南砺100キロマラニックの「リレー男女混合の部」に「チームSF」で参戦。昨年の第1回大会は100km個人の部にエントリーしたものの75km地点で無念のリタイヤ。形を変えての雪辱に挑む。リレーチームを組むにあたり、若手には「コーチ、本当は100km走りたいんじゃないのかな?」とずいぶん気を遣わせたようだけど、100kmリレーなんてなかなかあるものではないし、それにひとりで100km走るのは、いつでも出来るからね。(本当に?) ただエントリー前に「みんなで楽しくタスキをつなごう、みたいなノリなら勘弁。本気で表彰台を目指すなら一緒に出てあげなくもない」と、いま思えばずいぶんと高飛車なことを言ったのだが、その気持ちを汲んでくれたメンバーが、この春、ハーフマラソンとフルマラソンで全員自己ベストを更新。声高に「頑張ります!」なんて言わないけど、きっちりと結果は出す。コーチはけっこういい加減だけど、ホントによく出来た教え子たちです。

 リレーの部は、20か所以上あるすべてのエイドのどこでタスキをつないでもよく、一人が何回走ってもよいルール。第1走者とアンカーのみ計測チップを付けるというわりとラフな管理。当初は100kmを4区間に分けることも考えたが、いちばん速くゴールするにはどうしたらよいかを熟考した結果、短い区間を何度も走る作戦とする。半日続くインターバルトレーニング。ああ、おそろしや。22区間を男子2名が7区間ずつ、女子2名が4区間ずつ担当。さて、これが吉と出るか・・・

 AM2:45 スタート地点のタカンボースキー場に車で向かう3名を見送り、ひとり徒歩で10km地点の第2エイド(中継所)に向かう。宿から1.5kmほどなので、けして遠くはないのだが、街灯のない南砺の山奥を夜中にひとりで歩くのは、あまり楽しいことではない。中継所「村上家」には、何名かのランナーが。うちと同じ作戦のチームがけっこうあるということだな。

トップ通過から少しして、第2区のIさんの姿が見えてくる。「いま行ったアイツがターゲットですね」1区を走った後、車で合流したK君が、涼しい顔で重いミッションを課す。曖昧な返事をしてリレーゾーンへ。Iさんからタスキを受け取りながら、そのスピードと真剣すぎる表情に少し泣きそうになってしまう。タスキって、重いな・・・。汗で物理的にも重くなったタスキを掛け、相倉の山道へ。あのターゲット、絶対にぶち抜いてやる。距離約5kmのこの区間は、世界遺産五箇山相倉合掌造集落まで上り、そこから一気に15km地点の平行政センターまでを下るコース。昨年は歩いた急坂を今年はぐいぐい上る。ターゲットをとらえる前に、2名をパス。合掌造集落が近くなりターゲットをいつ抜こうか考えていると、後方から「レジェンド、ロックオン!」の声が。声の主は確認するまでもなく「TEAM AVANTE」のM校長。男女混合の部で表彰台を目指すにあたって、強豪トライアスリートを揃えた「TEAM AVANTE」は最大のライバル。ここから世界遺産を舞台に激しいデッドヒートが始まる。当初のターゲットはあっさりパス。集落を抜け、下りで逃げ切りを図るが、走力は向こうが上。「この後、太閤山で走るんでしたよね」(M校長は、ここで1走を務めた後、富山市内で別のリレーも走る。どんだけタフなんだ?)と揺さぶりをかける暇もなく、わりとあっさり抜かれてしまう。歯ぎしりしながら、タスキをK君へ。ぐぅ、あとは頼んだゾ。M校長とレースを振り返る間もなく、車で次の中継地点へ。

 

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 2回目の出走は、27km地点「うまいもん館」から32km地点「利賀行政センター」までの下りと上り。いつものピッチで軽やかに現れたMさんからタスキを受けスタート。前の区間でのM校長とのデッドヒートのダメージは特になし。快調、快調。この大会は、各エイドを富山県内の各クラブが担当しているのだが、32kmエイドは「富山ランニングクラブ」の仲間が運営している。なんとか、いいところ見せないと。そして出される食べ物がかなり充実していることを事前に聞いていたので、それを心の支えに頑張る。想定より早い時間で行政センターの麓へ。高台にあるセンターのコースに面した裏庭に小さな人影。ボランティア部隊のKaoさんのよく通る声が。「がぁんばってぇ~!」あぁ、ここはホームだな(笑)。ラストは猛ダッシュ。K君にタスキをつなぎ、「さぁ、何から食べようかな」と、まずジェラートを手にしたその時、Iさんが感情を押し殺した声で囁く「哀しいお報せです。この後の区間はフラットなので、K君は相当速いタイムで来ることが想定されます。長居は出来ません。すぐに行きます」 いやいや、まだ、クラブのみんなから全然ちやほやされていないし、何も食べていないんだけど・・・。後ろ髪をひかれる思いで護送車に収容。次の中継点へ。

3回目の出走は、42km地点「利賀道の駅」から49km地点「小牧ダム」までの7km。最長区間だが、そのほとんどが下り。レベルは違うけど、箱根駅伝の6区を任された選手の気持ちが少しだけわかる。制御不能のスピードに脛は悲鳴を上げているが、ここはタイムを稼がないといけないところ。ほかの3人のここまでの走りを見ていたら、足がどうのなんて言っていられない。30分かからずにタスキリレー。たぶん、人生最速の7km。

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 ここまで、全員が全区間で想定より相当速いタイムを叩き出している。各中継所で聞いた話を総合すると、混合の部で「2位」につけている模様。残りは半分。表彰台が現実味を帯びてくる。このあたりまで来ると、中継所でほかのリレーチームと何度も顔を合わせているので、お互い競い合ってはいるのだが、奇妙な友情が芽生え始めている(笑)

 山間部から下界に下り、井波の街中のエリアに。区間毎の距離も短くなってきて、交代のための移動も慌ただしい。「でも、まだ9時前なんですよね」この非日常的なイベントは、時間の感覚をもおかしくしてしまう。いま、平和な日曜の朝なんだな(笑) 比較的賑やかな城端も過ぎ、残りは1/4程度に。後続をかなり引き離していることは薄々わかっているのだけれど、ぼくらはまだ何かに取り憑かれた様にキロ4分台を刻み続けていた。

5回目の出走は、75km地点「TSTテクノ」から80km地点「桜ヶ池」までの5km。昨年、リタイヤしたポイントがある区間。順番としてこの区間が回ってくるというのも何かの縁だな。あの時、どうにもカラダが動かなくなって道端に仰向けに倒れ、見つめた空の色と、背中で感じたアスファルトの温度はいまでも思い出せる。でも、いまはそんな感傷に浸っている場合じゃない。この先でチームのみんなが待っている。疲れているのかいないのか、足が痛いのか痛くないのか、もうよくわからないが、池へ向かう坂をとりあえず気合でねじ伏せる。レースもあと20kmを残すのみ。

各エイドでは、けしてバリバリのアスリート風情ではない男女混合チームがリレー全体の45チーム中の5位につけていることを高く評価してもらえて、すこぶる居心地が良い。そして男子が女子より多くの区間を受け持っていることがものすごく好印象を与えている。その意味では、このオーダーは大成功だな(笑)

6回目の担当区間を終え、残りは10km。4区間目くらいから、何かひとつきっかけがあれば、すぐにでも攣ってしまいそうな足もなんとかもってくれている。

90kmを過ぎ、コースは福光の中心街へ。93km地点の福光行政センターに駆け込んできたMさんが泣いている。「信号で・・・2回も止められて・・・」 でもタイムを見れば、そのロスを挽回するのにどれだけ無理をしたのか容易に想像がつくし、もう「2位」は、ほぼ手中にしているのだから、泣く必要なんてまったくないのだけど、こんな強い気持ちを全員が持ち続け、一瞬たりとも手を抜かなかったからこそ、このチームはいまこのポジションにいられるのだ。

最後の中継所97km地点の「笹島工業」で、K君を待つ。「タスキを受け取ってから9分後くらいにはゴールするから急いで行けよ」と軽口をたたく余裕はある。今回、オーダーを決めるにあたりコーチが叩き台を作り、メンバーで話し合い、民主的(!?) に決めたのだが、最初に作った案を見せた時、ろくに内容を見もせずにK君がダメ出しをした。「これ、アンカーがコーチじゃないですよね。ゴールテープを切るのはコーチじゃなきゃだめですよ」 お前、クールな平成生まれのくせに浪花節かよ(笑)と、あの時は思ったのだが、いまとなっては感謝しかない。最後のタスキリレー。「足、攣らない程度に!」 ふふ、なめられたものだな。年季の違いってやつを見せてあげようじゃないか(笑)

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 最後の3kmは、たぶんカラダは相当キツかったけど、こみあげてくる笑いをこらえるのにかなりのエネルギーを使う。ゴールに先回りしたメンバーは、ノリのいいMCと一緒に「コーチ、早くぅ~」と絶叫していたらしいが、そんなことを知らないのん気なアンカーは、この幸せな時間が永遠に続けばいいなんて思っている。ゴールの福野体育館が見えてくる。カーブを曲がって、ゴール前、最後のストレート。ゴールテープの向こうには、笑顔の3人が。そう、ここは泣くところじゃない。笑顔だ、笑顔。昨年は、たどりつけなかったゴールに、チームのみんなに支えられて1年と7時間半かけてようやくたどり着いた。渾身のガッツポーズでゴール。メンバー4人で肩を組み、意味のない叫び声を上げながら飛び跳ねる。ふだんよく「コーチ、大人気ないです」と言われるのだが、いまだけはいいよね。MCがマイクを向けてくる。あまり冷静ではないので、危うく「最高で~す」なんて言いそうになるが、ここはたぶん大人のコメントが求められている。「本人たちを前にして言うのは、少し恥ずかしいのですが・・・」鼻の奥のほうが少しツンとするので、少し間をおき息を整える。「ここまで連れてきてくれた仲間たちに、感謝したいです・・・」

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 タイムは7時間34分。コーチのかなり強気な試算は、実は8時間10分だった。(ホントに、だめコーチだ・笑) 3位のチームのゴールを待って、表彰式が始まる。広告代理店が仕切るのではなく、地元富山とランニングを愛する人たちがみんなで集まり、努力して、手作りしたアットホームなこの大会に相応しいステキな表彰式。「表彰台」を合言葉にはしていたけれど、いまは、このメンバーで、最高の結果を出せたことだけが心から嬉しい。表彰台は・・・、想像していたのより、だいぶ質素なステージだったけど(笑)、たどり着いた場所からでないと見えない景色がある。 この「チーム」は最高だ。

 

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さぁ、次は3,003mの頂へ。

明日もいいトレーニングが出来ますように。

いや、やっぱり、もう少しだけ、この余韻に浸っていたいな・・・(笑)