柴又60K

42.195kmの先には何があるのか?
それが知りたかったら、自分で確かめるしかない。
6/5(日)柴又60kmの部をとりあえず走ってみた。
いや、この「とりあえず」が曲者。
いつか、隣の県の半島を1周したりとか、
はるか南の大学の後輩がいる島を1周したりとか、
山の中をライトをつけて1晩かけて走るためには
とりあえず、フルマラソンより長い距離を
走っておいたほうがよいかな、と。
そんなわけで、次の具体的な目標があるわけではないけれど、
とりあえず60kmは、いつかクリアしておかなければ、と思っていた。
でも、実際に走ってみて、
そういう感覚で臨むものではないな、と気付いたのも事実。
なんといっても42.195km以上の距離を走るのだから、
ココロとカラダの準備は必要(苦笑)

当日の天気予報は、午前中は雨で午後から曇り。
この暑い時期、それもアリかな、と思っていたが、
会場についた時には雨もあがり、スタート後には陽が差し始める。
週末イベント限定の晴れ男パワーは、
コントロールが出来ないのが難点。

2年前、一緒に宮古島を泳いで漕いで走った
地元のCCさんが応援にきてくれていて、
アップもほとんどせずに、しばし談笑。
距離が長いせいか、スタートの緊張感ゼロ。
なんだか緩〜い雰囲気。
スタートの合図も、さぁレースだ、というより、
やれやれ長い1日が始まったな、というカンジ。

1kmもしないうちに、意外なほど発汗。
6月ってマラソンに適した時期なのか?

江戸川沿いのサイクリングコースを淡々と走る。
変わらぬ景色。
淡々と時間が過ぎてゆく。
充実のエイドを楽しみながら、淡々と設定したペースを刻む。
ふだん時計をしないで走っているので、ペース感覚には自信がなかったが、
30km地点まで、5kmごとのラップはほぼ一定。
まるで精密機械のようだ。
もしかして、長距離走者の才能ある?(ないない)

折り返しで、ここまで追い風だったことに気付く。
好条件を前提とした精密機械だったか(苦笑)。
ただ、ここまでゆったりしたペースできたので、
体力的にはまだまだ余裕あり。
それに歳を重ねるにつれて、向かい風とか登り坂が
あまり苦にならなくなってきた、というかむしろ・・・。
(この先は理解されないと思うのでカット)

でも、折り返したあたりから、意外な難敵出現。
腕や足に地味な違和感。脱水・・・?
小まめに給水はとってきたが、
日差しと気温は、ランナーに優しい感じではない。
やれやれ、まだ30km弱あるのに。
加えて、35kmあたりで、腸腰筋のパワーがみるみるしぼむ。
フルマラソンであれば、残りの7kmくらいは
根性で何とかなるだろう、と思えるが、
あと25kmどうするの?
総走行距離は変われど、35kmの壁っていうのは、
ちゃんと存在するものなのだな。

後半は、意識が飛んでいるわけではないが、
思考するためのエネルギーが
充分に脳までいきわたっていない気がする。
機械的に左右の足を前後しているだけ。
自分がゴールするイメージがどうしてもわかない。
35〜42kmは、ほぼなんの感情の起伏もなく、
ただ物理的に前へ進む。
でも、40km手前のコース脇で
消炎鎮痛剤のスプレーを数本持って、
ランナーをサポートしてくれていたお兄さんは
後光が差していたな。
その節は、ありがとうございました。

42kmを過ぎ、フルマラソンの距離を越えたな、
と思ったら、なんとなく元気になる。
未知の距離がどうのこうのというより、
なんとなくぼんやりと先が見えた感じ。
陽も傾き、気温も若干下がったおかげで、
プチ脱水症状も改善された模様。
まだ残りは20km近くあるが、
とりあえずリタイヤせずに済みそうだという、
根拠のない自信がわいてくる。

50km手前、ここまで来たらメンタルのみですよ、
という応援が聞こえる。
若造、言ってくれるじゃねえか。
でも、いま抱えている問題は、
そのほとんだがフィジカルなんだよ(怒)

残り10kmを切ってからは、1kmがやたら長い。
いつものレースよりスピードが格段に遅いから、
時間がかかるということを差し引いたとしても。
やっぱりメンタルなのか(苦笑)

ゴール数キロ手前で
「背中のメッセージ、ありがとうございます」
と声をかけられる。
一瞬、自分の事ではないと聞き流しそうになるが、
この大会は、ゼッケンを前後につけることになっていて、
後ろのゼッケンには、メッセージが書けるスペースがあり、
そこに「がんばろう七ヶ浜」と書いたことを思い出した。
宮城県出身で、震災当時、地元にいたというその方は、
スイッチを押せば電気がつくことや、
蛇口をひねれば水が出ることに感動したことを
いまでも忘れていないと言った。
こちらも、会社の支店が七ヶ浜町にあることや、
来月行われるみやぎ国際トライアスロン
出場することなどを話しながら、しばし並走。
もうお互いに、きちんと会話が出来てしまうような
スピードでしか走れないのだ(苦笑)


夕暮れの柴又公園で、無事ゴール。
感動や歓喜はない。
いちばん正しいのは、安堵かな。
このタイミングで「走るの好きか?」と聞かれたら、
なんと答えただろう。
そうでもないです、と言ったかもしれない(笑)

カッコいいゴールではなかったかもしれないけど、
確実に一歩、階段を上った実感はある。
それは、足をかけなかったほうがよかった
階段なのかもしれないけど(笑)

この経験が、いつの日か
感動や歓喜を伴う瞬間につながってくれればいい。
そのためにも、前を向いて進み続けよう。

この日、100kmの部に出場していた友人2名が、
制限時間内に見事完走。
人としての評価は「変態」の一言に尽きるが、
尊敬には値するな。

来年?
いやいや、柴又はもう満喫しましたから、
卒業します。多分。

今回、学んだこと。
エンデュランス系ドキュメンタリーを見て感動した後は、
大会エントリーサイトを見てはいけない(笑)