競泳日本選手権 5日目

この日の最終種目、男子200平泳ぎ決勝に固唾をのむ。
決勝で派遣標準記録を突破して2位以内という
高いハードルへの果敢なチャレンジ。
北島康介の必死なパフォーマンスに心打たれる。
筋力やパワーは全盛期を凌ぐ値を示すという周到な準備。
大会直前に怪我を抱えての高地トレーニングをすることが、
どういう事になるのかは素人には想像もつかないが、
出来ることは、すべてやり尽くしてということなのだろう。

目標に喰らいついて、途中まで2位につけながら、
最後は、後輩たちに抜かれて5位。
最後にプールに向かって頭を下げたとき、
彼は何に思いを馳せていたのだろう。
アスリートが人々に感動を与えるのは、
試合でのパフォーマンスであるべきと常々思っているが、
今回ばかりは、世界選手権の代表落ちから、
ここまで自力で這い上がってきた
その過程にも拍手を送りたい。

選手・関係者が陣取るスタート地点裏のスタンドから
康介ありがとう、という声が飛ぶ。
解説の寺川綾さんは、涙声で彼の強さと優しさを語る。
4年前、康介さんを手ぶらで帰すわけにはいかない、と言った松田丈志くんは、
康介さんがいたから僕らは常に上を見て努力する事ができた、と言う。
代表を逃しても、彼は日本チームのキャプテンなんだな。

頑張り切れたという思いがあるから、
悔しいけど晴れ晴れしいというか、
やり切った感で今はいっぱいです。

目標には届かなかったけど、
自分の愛したものに正面から向き合って、
最後まで諦めずに、前を向いて戦って、
こんな風に言って辞めていけるのは幸せだよね。

気丈にインタビューに答えていた彼が、
平井コーチの話になって言葉を詰まらせる。

中学生からですもんね。

ぼくらが北島康介と聞いて頭に思い浮かべるのは、
2大会連続の金メダルだったり、
「超〜気持ちいい」や「なんも言えねぇ」だけど
彼にとっての水泳とは、コーチと一緒に
夢を語り、努力しつづけた練習場の風景なのだろう。

泣いてんだもん、インタビューの人。ズルいでしょ。

彼が、ここまで愛されるのは、
オリンピックでの偉業のおかげではなく、
こんな素直すぎるところなんだろうな。
引退会見を大会が終わった翌日に行うという配慮も
なんともこの人らしい。


トビウオジャパンfacebookページより)


4年に一度のオリンピックイヤー。
選ばれた才能を持ったすべてのアスリートが、
日本中のひとたちから、愛され、応援され、
夢を与える存在であることを切に願う。