勝利至上主義

最初にお断りしておきますが、
体育会気質みたいなものに嫌悪感を抱いている方は、
読まれないほうが無難かと思います。

長野県が、中学生の運動部の朝練習は原則やめるべきだとの方針案をまとめた。
800字程度の新聞記事からは県の真意は見えてこない。
たぶん、部活動のあり方をよく考えましょうということだと思う。
でも「朝練で疲れて授業に集中できない」という理屈を認めることは、
「これは想定外ですから私の責任ではありません」と言う大人を作る。
働き盛りの40〜50代のアスリートの多くが、確実に時間の確保できる
早朝にトレーニングを行うが、仕事で居眠りをしている人は皆無だろう。

また、基準案のなかには
「勝利至上主義に偏らず、生徒のニーズを生かす」
なんていう耳触りのいいフレーズが盛り込まれている。
最近、どうも勝利至上主義が悪者にされている。
指導者が選手に暴力をふるって服従させるような世界と
混同されているみたいだけど、絶対違う。
たとえば、なでしこジャパンが、欧米との体格差を埋めるために
倒れるまで走りこんで世界一のフィットネスを手に入れる。
私の中での勝利至上主義はこんなイメージ。
そこには多少の理不尽が伴うのだけれど、
体力のある若いうちにそれは経験しておくべき。
だって社会に出たら、もっと意味のない理不尽が
たくさん待ち構えているのだから。

ふと、数十年前の夏の日の夕暮れの情景が目に浮かぶ。
「いいか、スクラムっていうのはなぁ」
肩と首と頭の境目がはっきりしないOBが言った。
「組んで、組んで、組みまくって、泣きながら組んで・・・」
「涙も枯れ果てた時に、はじめていいスクラムが組めるんだよ」
理不尽極まりない理屈。
運動生理学的には100%間違っているだろう。
でも、その時、その場にいた全員が同じものを見ていた。
あの夏の日の勝利至上主義は正しかった。多分。
ただ、それを若い人に伝える自信はまったくないけど。