冬の喝采

最近、ヒザや腰や足首がやたら痛いのは、
ケガに悩まされ続けたこの本の主人公に
感情移入しすぎたからか、
それとも、
元旦から1日も休まず走り続けているせいか・・・


黒木亮「冬の喝采」(講談社)を読む。

経済小説で有名な作者が、
陸上競技に情熱を注ぎ込んだ
学生時代を振り返る自伝的小説。

作者は早稲田大学OB。
最近DeNA陸上部創設で話題の瀬古監督と同学年。
昭和の時代の運動部の風景が懐かしい。

いまでは信じられないが、あの時代は、
トップアスリートでも水を飲むのを我慢して
体重管理をしていたんだな。
早稲田の競走部でさえそうなんだから、
町の少年野球チームの選手が
練習中に水が飲めなかったり、
肩を冷やすからという理由で
プールの授業を見学していても
不思議ではない(苦笑)

主人公が、中村監督に追い込まれる様子が痛々しすぎる。
選手に手を上げることはないものの、
狂気じみた情熱で指導にあたる老監督の数々のエピソードは、
最近、新聞紙面を賑わせている体罰の問題について、
ひとつのヒントを投げかけている。

中村監督の教え子の多くが
陸上競技の指導者となったが、
同監督の死後、彼らが
「指導者になって中村監督の偉大さがわかった。
 あれほど自分の体に鞭打ち、
 情熱を持って選手を指導するのは、
 並大抵のことではない。」
と口を揃える。

監督も選手も本当に必死だったのなら、
そこには信頼以外のものは存在しないのだろう。

・・・

大学4年の箱根駅伝を最後に
陸上競技からきっぱりと足を洗う主人公。

中・高と地元でお世話になった尊敬する人から
もったいないと詰め寄られ、
「僕は・・・・瀬古にはなれませんから」
と、答える場面が切ない。

箱根駅伝のメンバーに選ばれることだけでも
すごいことだと思うのだが、
そこにはまた別の思いがあるということなんだな。


この歳になっても、
新聞記事には絶対ならないようなものに
笑ってしまうほど真剣に打ちこめているのは、
若い頃、人がうらやむような才能を
与えられなかったということが
与えてくれたものなのかもしれないな(苦笑)