誰のために走るか

1日中、窓の外からショパンの調べが流れてくる土曜日。

堂場瞬一「ヒート」(実業之日本社)を読む。

ラソンの世界記録を出すための高速レースを企画する人びとと、
ランナーたちのそれぞれの葛藤の物語。

前半部分では、トップから大きなプロジェクトの責任を無理やり
押し付けられる中間管理職にヘンに感情移入してしまう(苦笑)。

架空のレースは、横浜北部と川崎を舞台に行われるのだが、
細部にわたる描写が限りなくリアルで、
作者ってもしかしてご近所さん?と思わされてしまう。

そして、この元ラガーマンは、
今回もアスリートたちの心の機微を
琴線に触れる言葉で紡いでいる。


一度も見たことの無い夢を、
今日だけ見てもいいじゃないか


・・・泣けるなぁ


・・・

ペースメーカーに引っ張られて作られた記録が、
本当に価値のあるものなのか、という問題提議
がさりげなくされているけれど、
たしかに最近「ルールさえ守れば何をしてもいい」
という風潮がスポーツの世界にまで蔓延している
ような気がしなくもない。


・・・

これから読まれる方、
完全な続編というわけではないけれど、
「チーム」を先に読んでおくと、
1.2倍くらい楽しめるかもしれません。